特許US10018967B2|Breguet|磁気ピボット

スイスを代表する高級時計ブランドBreguetは、強磁性体を含む部品の姿勢を制御する革新的な方法を実用化しました。発明者Sylvain Maréchal、Davide Sarchi、Olivier Karlen、Arnaud Todeschiniによって開発されたこのシステムは、部品の両端に2つの磁場をかけ、その強さにあえて不均衡を生じさせることで、力の場をつくり出します。
その結果、一方の端はポールピース(磁極片)の接触面に当たり、もう一方の端は直接触れることなく浮いた状態に保たれます。
このコンセプトは磁気ピボットとして具現化されました。異なる強さの磁場を発生させるポールピースを備えたガイド装置を組み込み、正確な位置決めを実現するとともに、可動部品の摩擦を低減します。
決して新しい話題ではありませんが、機械式ムーブメントの効率と耐久性に大きな影響を与えた、近年の時計製造における最も重要な技術革新のひとつと言えるでしょう。

磁気ピボット
特許US10018967B2(2010年11月9日)によって磁気ピボットを保護したBreguetは、磁気を利用して自社の時計の精度と信頼性を高め、時計製造の歴史に新たな金字塔を打ち立てました。この重要な発明の影響が正当に評価されるのは、おそらく数年後のことでしょう。もっとも、これ自体も新しい発明ではありません。磁気ピボットは、炭素鋼製のテン真と、各ルビーの背後に置かれた「レアアース」磁石で構成されています。一方の磁石はもう一方より強く、テン真が文字盤側のルビーと常に接触し続けるため、まるで宙に浮いているかのように見えます。テン真とルビーの間の磁気的な結合は重力よりも強いため、時計の姿勢にかかわらず、テン真は受け石の上で回転し続けます。磁気に関するBreguetの進歩は、テン真の支持、回転、安定性を向上させる前例のない機構も生み出しました。
さらに、このシステムは緩衝装置としても機能します。衝撃によってピボットが所定の位置からずれると、ピボットの横方向のずれが大きくなるにつれて、それを引き戻す磁力も強まります。
こうしてテン真は自動的に元の位置へ戻り、最大の磁束を回復します。

より安定したテン真
テン真を貫く磁場がテンプを安定させます。最も頻繁に起こる低強度の衝撃にも、時計が受ける加速度にも影響されません。より強い偶発的な衝撃を受けても、ほぼ瞬時に正しい位置へ戻ります。これにより、とりわけ縦姿勢において、従来の方式で支持されたテンプの摩擦に左右されることがなくなり、テンプの性能が向上します。磁気誘導は、ムーブメントの精度にさまざまな利点をもたらします。テン真は磁場の中に置かれ、磁束によって受け石に押し当てられた状態に保たれます。この磁束は、テン真を理想的な位置へ戻そうとする働きもします。
この発明によってBreguetは、機械式時計に対する磁気の悪影響を克服しただけでなく、それを制御して回転の効果とテン輪の軸の安定性を高めることにも成功しました。
発明者たち
Sylvain Maréchalは、時計業界で確かなキャリアを築いてきたフランスの時計師・発明家です。2001年から2016年までMontres Breguet S.A.に在籍し、時計製造の分野でさまざまな技術革新に貢献しました。時計用の機械式巻上げ装置や、時計部品用の磁気式および/または静電式ピボットなど、数多くの特許の共同発明者でもあります。Lycée Polyvalent Edgar FaureおよびLEGTP René Cassinで学びました。
Davide Sarchiは、時計製造の分野で複数の特許を持つ発明家です。その発明は、ハンドピース用のアシスト付き締付け装置から時計用の脱進機構にまで及びます。Montres Breguet S.A.に関わり、先進的な時計技術の開発で積極的な役割を果たしてきました。
Olivier Karlenは、時計製造の分野で顕著な功績を残してきた発明家です。その特許には、時計用の脱進装置や時計部品用の連結機構などがあります。Montres Breguet S.A.と協働し、機械式時計の精度と効率を高める革新的なソリューションの開発に携わってきました。
Arnaud Todeschini:Arnaud Todeschiniに関する具体的な情報は限られていますが、磁気式および/または静電式ピボットの開発など、時計関連の特許に関わっていることが知られています。Sylvain Maréchal、Davide Sarchi、Olivier Karlenといった発明者たちとの協働からは、時計業界の技術革新への大きな貢献がうかがえます。
これらの発明者たちの名が語られることはまれですが、とりわけ機械式ムーブメントの精度と効率の面で、時計技術の進歩に極めて重要な役割を果たしてきました。
発明の分野
本発明は、自らの回転を案内することのできる時計部品の姿勢を制御する方法に関するものです。この部品は、少なくとも部分的に透磁性または磁性を持つ材料、および/または少なくとも部分的に導電性を持つ、または帯電した材料で作られています。この部品は、第一端と第二端の間のチャンバー内に取り付けられます。
発明の背景
マイクロメカニクス、とりわけ時計技術では、部品の軸や真を位置決めするために従来型の手法が用いられてきましたが、それらは常に機械的な摩擦にさらされています。時計のムーブメントや発振器に組み込まれた回転部品では、部品の効率やクオリティファクターが時計の姿勢に大きく左右されることが、繰り返し問題となってきました。時計が縦姿勢にあると効率やクオリティファクターは大きく低下しますが、ほかの姿勢ではそうしたことは起こりません。
発明の概要
本発明は、時計部品の姿勢を制御する方法、より具体的には部品を回転軸上に整列させ、摩擦を大幅に低減する方法を提案するものです。
これにより、時計ムーブメントの作動品質を空間における姿勢から切り離すことを目指しています。
そのために本発明は、磁気ピボットによって部品の回転を案内するガイド装置を用い、姿勢に左右されない効率またはクオリティファクターを実現します。
本発明によれば、部品の第一端と第二端の両側に2つの磁場または静電場が形成され、それぞれが部品をポールピースの方へ引き寄せます。これにより部品周囲の場に不均衡が生じて力の差が生まれ、部品の一方の端が一方のポールピースの接触面に押し付けられる一方、もう一方の端はもう一方のポールピースから離れた状態に保たれます。磁場または静電場は非対称に分布し、両端で異なる強さを持ちます。

図1:本発明によるガイド装置の部分概略立面図。
図2:磁気ピボットに組み込まれた部品の図。
図3:部品が安定して協働する位置にある磁気ピボットの図。
図4:部品に作用する力の系。
図5:部品が不安定な位置にあるときの力の系。

図6:第一の変形例による磁気ピボットの縦断面図。

図7:磁気ピボットの別の変形例。
図8:磁気ピボットを組み込んだ時計の部分概略斜視図。

図9:ガイド装置に挿入されたテンプの部品。
本発明は、非対称に分布する磁場または静電場によって時計部品の姿勢を制御する新たな方法と装置を提案するものであり、時計の姿勢にかかわらず、安定性の確保、摩擦の低減、そして時計ムーブメントの効率と品質の向上を実現します。
応用
腕時計Breguet Classique Chronométrie 7727には、キャリバー591Cが搭載されています。手巻きの機械式ムーブメントで、精度の高さで際立ち、さまざまな技術革新を取り入れています。そのひとつが磁気ピボットです。

この磁気ピボットは、このムーブメントの重要な特徴です。脱進機に用いられ、従来の金属製ピボットを、先に見たように摩擦を最小限に抑える磁気システムに置き換えています。

腕時計Breguet Classique Chronométrie 7727は、手巻きの機械式ムーブメントであるキャリバー591Cを搭載し、60時間のパワーリザーブを備えています。直径32.1mm、厚さ3.5mmと、このムーブメントは極めて薄型です。45石を備え、10Hzの振動数、すなわち毎時72,000振動で作動し、卓越した精度を実現しています。その脱進機にはシリコン製ダブルヒゲゼンマイが採用され、信頼性と耐摩耗性に優れるうえ、温度変化に対する耐性も向上しています。全体は286個の部品で構成されています。





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