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トリプルカレンダー|ムーンフェイズ|研磨仕上げの焼き戻し鋼|1895年

12 時間前
読了時間: 13分

シリーズ: グランド・コンプリケーション


文:Sílvio Pereira

ムーンフェイズ付きトリプルカレンダー(その1)



-大型のLepine(オープンフェイス)懐中時計。ムーンフェイズ付きトリプルカレンダー。 1895年製

-機能:時、分、秒、日付、曜日、月、ムーンフェイズ

-シリアルナンバー:なし

-製造元:不明

-製造国:スイス

-キャリバー:クラシックなブリッジ構成。番号なし

-ムーブメントの保護:焼き戻し鋼製の防塵カバー

-脱進機:スイスレバー脱進機

-テンプ:バイメタルの温度補正テンプ、Breguetひげゼンマイ付き

-パワーリザーブ:36時間

-振動数:18,000振動/時

-石数:15石

-ケース素材:研磨仕上げの焼き戻し鋼

-文字盤:傷やヘアラインのないエナメル

-スモールセコンド:6時位置

-日付:9時位置

-月:12時位置

-曜日:3時位置

-ムーンフェイズ:6時位置

-ケース径:66.2mm

-厚さ:21.9mm

-重さ:199g

-ゼンマイの巻き上げは12時位置のリューズで行う。

-針:ルイ15世様式。リューズで操作し、巻真解除用のピンは1時 位置にある。

-数字:時はローマ数字、5分ごとの目盛りはアラビア数字、 その他は「chemin de fer」(レイルウェイ)スタイルのインデックス。

-秒:5秒ごとにアラビア数字、その他はインデックス。

-風防:極めて良好な状態。

-ケース裏蓋の番号:なし


総評:ムーンフェイズ付きトリプルカレンダー時計。保存状態は申し分ない。

ムーンフェイズ付きトリプルカレンダー(その2)



カレンダー時計


ご存じのとおり、1年は365日または366日あり、月によって日数が異なります。しかもそのひとつである2月は、4年に一度日数が変わります。すぐにおわかりのように、これは時刻だけでなく日付も表示しようとする時計づくりにとって、まさに難題でした。


暦の誕生


暦を月に分けることはローマ人に始まります。古代ローマの1年は10の月と、その間に挟まれるいくつかの期間に分けられていました。興味深いことに、1年の長さはポンティフェクス(古代ローマの神官団の一員)が決めていました。当然ながら、この方式は大きな混乱を招きました。


紀元前46年に最高神祇官(Pontifex Maximus)を務めていたユリウス・カエサル(紀元前100年~紀元前44年)のもとで、暦はより正確なものへと改められました。ユリウス暦と呼ばれるこの新しい方式はより正確で、12か月で構成されていました。


最初のユリウス暦


従来の10か月(2月は28日)に加えて、新たな2つの月はカエサル朝をたたえて名づけられました。新しい2つの月が7月(July)と8月(August)の名を得たのはそのためで、カエサル朝を築いたユリウスとアウグストゥスという2人の皇帝に由来します。


この2つの月が加わったことで、年末までの残り4つの月は、名前の意味と順番が合わなくなりました。その名の由来どおり7番目の月だったSeptember(9月)は9番目になり、ほかの月も同様にずれていったのです。


この新しい方式は以前のものよりはるかに正確でした。しかし、太陽年が「基本的な」ユリウス暦の想定より6時間長いことは考慮されていませんでした。


この問題が解決されたのは、それから1500年も後のことです。


現在私たちが使っている暦は、1582年に教皇グレゴリウス13世(1502~1585年)が導入したものです。ユリウス暦を改良したこの暦は、教皇にちなんで「グレゴリオ暦」と名づけられました。


教皇グレゴリウス13世


この方式は、ユリウス暦が不正確であると突き止めた天文学者たちの計算を受けて導入されました。その誤差は大きく、1500年にわたる使用の間に、太陽の動きとの間に数日のずれが生じていたのです。


グレゴリウス13世が関心を持っていたのは天文学そのものではありませんでした。彼はただ、毎年の復活祭をできるだけ春分に近い日に迎えたかったのです。その解決策は、4年ごとに1日を加えて暦を季節と一致させることでした。


時計の中のカレンダー


最もシンプルな時計は時刻しか示しませんが、ほかの機能を備えた時計もあり、そうした機能は「コンプリケーション」と呼ばれています。なかでも最も一般的なもののひとつが日付表示です。


日付表示のコンプリケーションは、文字盤の小窓に日付を示すだけの簡素なものから、永久カレンダーのような高度なものまでさまざまです。トゥールビヨンやムーンフェイズといったより複雑なコンプリケーションに比べれば、日付表示は比較的シンプルです。しかし、永久カレンダーは日付表示のなかでも最も複雑なもののひとつです。年次カレンダーにやや似ていて、日付、曜日、月を表示します。永久カレンダーと年次カレンダーの違いは、機能の作動のしかたにあります。年次カレンダーは閏年に対応するため年に一度手動で調整する必要がありますが、永久カレンダーは閏年まで計算に入れています。そのため、何百年もの間、手動調整なしで正しく作動し続けることができます。永久カレンダーは、時計に搭載されるコンプリケーションのなかでも最も魅力的で精緻なもののひとつなのです。


これまで見てきたように、時計は最大で3種類のカレンダーを備えることができ、通常は小窓やサブダイヤルで日付、曜日、月を表示します。シンプルなカレンダーは31日を数えるため、その月が28日、29日、30日のいずれなのかを区別できません。次に年次カレンダーがあります。12か月の暦に合わせて30日の月と31日の月を判別しますが、2月の変わり目には年に一度の修正が必要です。そして最高峰が永久カレンダーで、長年にわたり閏年でも正しい日付を表示するよう組み込まれています。


永久カレンダー時計の歴史


永久カレンダー機構は、早くも1695年にTompionによって置時計に用いられており、


Thomas Tompion


その後継者Grahamも用いていましたが、


George Graham


これを懐中時計に初めて応用した人物としてしばしば名前が挙がるのはThomas Mudgeです。


Thomas Mudge


現在知られているMudgeの永久カレンダー時計は2本のみです。個人コレクションに収められているNo.525と、大英博物館に展示されているNo.574で、後者のオリジナルの金製ケースには1764年のホールマークが刻まれています。


Thomas Mudge No.525。2016年7月7日、Sotheby'sにて60,000ポンドで落札



大英博物館に展示されているThomas Mudge No.574


1981年、George Daniels博士は『Antiquarian Horology』誌にThomas Mudgeに関する論文を寄稿し、No.525のムーブメントを1762年製としました。大英博物館の個体はわずか3年後の1765年製とされています。永久カレンダーを時計に応用した初期の例はあるものの、1762年以前に完全な永久カレンダーを備えた時計の存在は、ある程度の信頼性をもって確認されていません。長年にわたり、Abraham Louis Breguetが1783年に永久カレンダーを含む有名な「Marie Antoinette」の製作に着手した際、初めて永久カレンダーを組み込んだ人物だと考えられていました。


Mudgeの2本の永久カレンダー時計、No.525とNo.574は、機構面でも外観面でもよく似ています。文字盤のデザインには細心の注意が払われ、実用的で読み取りやすいよう工夫されています。日付は12時位置の上にある金製のマーカーで示され、回転するディスク上の数字を読み取ります。このリングは、その月の正しい日数を考慮するよう設計されています。ムーンフェイズ用の大きな開口部があり、その下の左右にはさらに大きな2つの開口部があります。左の開口部には1年の各月が表示され、それぞれの下にその月の日数が刻まれています。2月には専用の補助ダイヤルがあり、月の長さと閏年を示します。右の開口部には曜日が表示されます。また、No.525と574のいずれもルビー製のシリンダーを備えている点も注目に値します。Mudgeは、この重要な技術的進歩をいち早く取り入れた時計師のひとりでした。


Thomas Mudge(1715~1794年)はエクセターで生まれ、のちにロンドンへ送られて、1730年5月4日にGeorge Grahamの弟子となりました。1738年、MudgeはFleet StreetのGrahamの近くに自身の工房を構えます。1750年には、同じくGrahamの弟子で1746年に独立したWilliam DuttonがMudgeに加わりました。当初、彼らの時計には引き続き「Thomas Mudge」と署名されていましたが、1760年代に銘は「Mudge & Dutton」に改められました。


1757年にThomas Mudgeが発明したレバー脱進機は、イギリスで最も重要な時計師のひとりとしての彼の名声を確固たるものにしました。



Thomas Mudgeのレバー脱進機の詳細図


250年以上を経た今も、レバー脱進機は世界中の機械式時計の生産で主流を占めています。精密計時の分野での革新に加え、Mudgeは均時差表示を備えた最初の時計、最初の永久カレンダー時計、そして輪列にフィードバックを備えた最初の時計とも言えるものを製作しました。1771年にMudgeはプリマスへ移り、そこでマリンクロノメーターの改良に取り組み続けました。


時計における日付表示のさまざまなタイプ


シンプルなカレンダー機能を備えた時計は、製造上それほど複雑ではありません。日付と曜日を表示する機構も、時計の価格をほとんど押し上げることはありません。


シンプルな日付表示の時計


最もシンプルなモデルでも日付と曜日を表示するダブルデイト機能を持つことがありますが、日付表示のコンプリケーションは時計づくりにおいて高く評価されており、多くの高級時計のデザインで重要な役割を果たしてきました。


ダブルデイト表示の時計


たとえば、この美しいGlashutte Original Senator Panorama Dateをご覧ください。意表を突くエレガントな文字盤デザインと2枚のディスクによる日付表示に、ムーンフェイズ表示を組み合わせています。



本当の問題は、こうしたシンプルな機構には28日/29日、30日、31日の月を区別する手段がないことです。そのため、2月、4月、6月、9月、11月には手動で調整しなければなりません。シンプルな時計の多くは、この日付と曜日の表示、あるいは日付表示のみを備えています。


その次の段階にあるのが、いわゆる年次カレンダーです。


年次カレンダー機能が登場したのは1900年代の終わりです。トリプルデイトとも呼ばれ、30日の月と31日の月を自動的に判別できますが、4年に一度の閏年に2月へ1日を加えることはできません。

このコンプリケーションを備えた時計のひとつが、美しい年次カレンダーモデルCorum Admiral's Cup Legend 42です。



ご覧のとおり、この時計はブランドを象徴する12角形のデザインをまとっています。月は6時位置のサブダイヤルに、日付は中央の針によって、縦方向のバーリーコーン模様のギヨシェを施したエレガントな文字盤の上に表示されます。


そのため、このタイプの時計は年に一度、2月に手動で調整するだけで済みます。


3つめは、最も完成度が高く複雑な時計のグループで、いわゆる永久カレンダーを搭載しています。つまり、「均時差」と呼ばれる精緻な一連の機構によって、閏年にも対応できるのです。


なかには、グレゴリオ暦では考慮されていない太陽時まで計算できるほど高度なものもあります。現在の暦はほぼ完璧ですが、完全ではないからです。


つまり永久カレンダーは、まさに……「永久」でなければなりません。この問題を解決する仕組みを備えているため、暦の上の1年は天文学上の1年と一致し続け、2100年まで作動します。



上に示したのは永久カレンダーを備えた時計の一例、Audemars Piguet Classique Perpetual Calendarです。プラチナケースの美しくエレガントな時計で、ケースのサファイアガラスを通して、複雑で見る者を魅了するキャリバーを眺めることができます。


日付表示の精度には、さらに上の段階があります。最後のタイプの時計は、百年ごとの閏年の計算という大きな課題に取り組む修正機構を備えています。


それがセキュラー・パーペチュアルカレンダー(世紀永久カレンダー)時計です。生産されているものはごくわずかで、きわめて希少です。永久カレンダーが特別な存在だとすれば、これらの時計は前人未到の、常軌を逸したレベルの時計づくりに達しています。


では、百年ごとの閏年とは何でしょうか。グレゴリオ暦は、そのあらゆる複雑さをもってしても完璧ではありません。わずかな誤差が残り、それはグレゴリオ暦のサイクルによって100年ごとに修正されます。


要するに、このわずかに残るずれを修正するため、グレゴリオ暦には独自の世紀単位の閏年サイクルも導入されています。世紀の変わり目の年のうち、400で割り切れる年だけが閏年とされるのです。したがって、1700年、1800年、1900年、2100年、2200年、2300年は閏年ではなかった、あるいは閏年にならず、2月は28日しかありません。一方、2000年は閏年で、2400年も閏年になります。


ご想像のとおり、ごくわずかな誤差に対処するためのこの新たな複雑さは、一般的な時計師が思い描く整然とした機械の夢を打ち砕いてしまいます。


この例外が存在するということは、永久カレンダーに、世紀の変わり目との関係で閏年がいつ訪れ、いつ訪れないのかを正確に把握する追加の制御機構が必要だということです。


歯車を組み合わせて「シンプルな」永久カレンダーを計算させることさえ容易な仕事ではなかったのですから、機構にこの例外まで計算させるのはほとんど不可能に近いのです。


それでも、この偉業を成し遂げたメーカーがいくつかあります。



上の写真は、この驚くべきコンプリケーションを備え、現在生産されている数少ない腕時計のひとつ(史上3本しか存在しません)、Svend Andersenのセキュラー・パーペチュアルカレンダーです。この時計は2400年まで正確に作動するようにプログラムされていますが、それを過剰だと感じる人もいるかもしれません。それまで休むことなく動き続けなければならないのですが、問題は、どんな時計も5年から10年ごとに洗浄と注油が必要だということです……


1万年時計


これ以上に精密なものはありえないと思ったなら、それは間違いです。もっとも、この場合に話題にしているのは腕時計ではありませんが。


1万年にわたって動き続ける機械式時計を作るプロジェクトがあるのです。


この野心的なプロジェクトを支援しているのは、つい最近まで世界一の富豪だったJeff Bezosです。


「1万年時計」はLong Now Foundationによって製作が進められています。この時計は1万年動き続けることを目指しています。現代文明の最古の痕跡がおよそ6000年前にさかのぼることを考えれば、これがいかに野心的な試みであるかは容易にわかるでしょう。



1万年時計のプロトタイプ


この時計は太陽エネルギーと熱エネルギーによって自らエネルギーを生み出すよう設計されています。これらの源だけで時計を動かし続けるのに十分なエネルギーが得られると考えられていますが、来訪者には時計のゼンマイを巻くことが推奨され、それによって時計は現在の時刻を表示できるようになります。これはエネルギーを節約すると同時に、どれだけの来訪者が時計に触れたかを確かめる手段にもなります。


時計はまだ製作段階にありますが、上に示したようなプロトタイプがすでに作られ、最終的な姿をささやかに垣間見せています。


初めての永久カレンダー腕時計


永久カレンダーを備えた最初の腕時計を生み出したのはPatek Philippeです。同社は1898年、女性用のペンダントウォッチのために最初のコンパクトな永久カレンダームーブメントを製作しました。1925年、Thomas EmeryというPatek Philippeの裕福なコレクターが、このコンプリケーションを備えた最初の腕時計を注文しました。


1925年製、Patek初の永久カレンダー腕時計。Ref. 97975


Patek Philippeは1898年に製作したのと同じ34.4mmのコンパクトなキャリバーを用いました。この精緻な時計を完成させるのに、Patekは2年を費やしました。


永久カレンダー腕時計を手がけた2番目のブランドはBreguetで、そのわずか数年後の1929年のことでした。


1929年製、Breguet初の永久カレンダー腕時計


そのコンパクトなムーブメントはPatek Philippeのものよりさらに小さく、わずか22.5mmでした。


続いたのはJaeger-LeCoultreで、 数年後の1937年に同社も独自のモデルを製作しました。


1937年製、Jaeger LeCoultre初の永久カレンダー腕時計


この長方形の永久カレンダーを備えた特別な時計は、Antoine LeCoultreとEdmond Jaegerの提携、すなわちJaeger LeCoultreというブランドの誕生を記念して作られたと考えられています。


永久カレンダーの数十年の歩み


Patek Philippeが製作した最初の永久カレンダー腕時計と同様に、初期の永久カレンダー時計の多くは注文に応じてのみ作られるものでした。1940年代からは永久カレンダー時計の量産が進みました。1960年代になると、初の自動巻き永久カレンダー時計が作られ始めます。永久カレンダーにとってもうひとつの重要な転機は1985年に訪れました。この年、IWCはこのコンプリケーションの機構に最も大きな進歩のひとつをもたらしました。よりシンプルな時計と同じように、ひとつのリューズだけで調整できる連動式キャリバーを設計したのです。


すべての調整をリューズで行えるIWC Portuguese永久カレンダーの一例


今日もなお、このコンプリケーションは時計師や時計愛好家を魅了し続けています。最も手の込んだ高価な時計のなかには永久カレンダーを備えたものがあり、それらはきわめて高い価値を持っています。


永久カレンダー機能は、調整なしで曜日、日付、月を表示するという実用的な目的を果たすだけのものではありません。高級時計づくりの芸術を高める役割も担っているのです。


代表的なモデル



Patek Philippe


Breguet


Audemars Piguet


Jaeger LeCoultre


IWC Pilot




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